「意地ぬ出(い)じらぁ手(てぃ)引き 手(てぃ)ぬ出(い)じらぁ意地引き」。糸満市白銀堂に伝わる、手が出そうになったら怒りを鎮めよ―との格言だが、沖縄戦体験者は平和を願う言葉として語る
▼力で変えられないのは、人も国も同じ。小さな島国ならではの「万国津梁」の精神で培われた国際関係の作法が、民の考え方にも深く根付いてきたと感じる。同じように空手にも「空手に先手なし」という金言がある
▼こうした精神と正反対の暴力にロシアは突き進む。市民の犠牲もいとわない無差別攻撃に国際社会から一層批判が強まっている。砲爆撃の中を逃げ惑う女性や子どもたちの姿は、沖縄戦にも重なる
▼「政治家は民の命を虫けらのようにしか考えていないのか」。沖縄戦で従軍した翁長安子さん(92)は力の信奉者をこう批判する。猛烈な砲爆撃をかいくぐり、本島南部で大勢の子どもや女性の無残な死を目にした
▼力で人や国は変えられない―。苛烈極まる凄惨(せいさん)な地上戦を経験した沖縄から、黄金言葉に込めたウチナーンチュの思いが世界に広がることを願う。