<金口木舌>味と看板の価値


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 宜野湾市で約40年続くタコス店「メヒコ」を切り盛りしてきた具志堅信男さん、美佐子さん夫妻が引退したのは2月。店に立つ最後の日、夫婦が黙々と、しかし息ぴったりでトルティーヤを揚げる姿にはこみ上げるものがあった

▼常連客が夫妻にねぎらいの言葉をかけていた。だが客の表情には安堵も。信男さんの友人の娘である喜友名綾乃さんらに店の看板と味を引き継いだからだ
▼沖縄市で40年以上店を構えた中華料理「北京亭」(旧李白亭)は昨冬に閉店した。神奈川県で修業した仲本兼和さんの味のファンは多く、閉店を惜しむ声が相次ぐ中、近くに事務所を構える仲本武史さんがクラウドファンディングを活用した店舗継承と人材育成に挑んでいる
▼同じコザだけでも「カツB」で有名な定食丸仲、シフォンケーキの名店ゴヤケーキ、台湾料理凱莎琳など老舗の名店がこの数年で閉まり、さみしがる人も多い
▼「地域ブランド」でもある地元老舗店の看板と味をどう守るか。経営する個人や一家だけでなく、街全体の問題なのかもしれない。