<金口木舌>基地の中の故郷と爆音


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 「金網を見つめていると、あの音が聞こえてくる」。4月にリニューアルした「道の駅かでな」の学習展示室が上映する動画はこの言葉で始まる

▼「金網」は米空軍嘉手納基地を囲む金網。「あの音」は基地の中に消えた千原集落に伝わってきた「千原エイサー」の太鼓の音だ。千原は1800年ごろに首里などから移り住んだ士族たちの集落。戦後は基地に飲み込まれた
▼展示室では戦前の嘉手納の様子も学べる。本島南部と中部をつなぐ軽便鉄道の終着駅もあった嘉手納は「中部で最もにぎやかだった」。だが戦後は町面積の実に8割を基地に接収され、まちづくりや開発は制約された
▼生活の場を奪った嘉手納基地に先週、米本国や三沢基地から外来機30機以上が一挙飛来した。100以上の常駐機に加え、異例の規模だ
▼「生まれた土地でエイサーを踊ることが私の願いです」。冒頭の動画は、基地が返還される日を待ち望む町民の思いで締めくくっている。だがきょうも金網の向こうはチムドンドンする太鼓の音ではなく米軍機の爆音が響く。