<金口木舌>「ないこと」にされない社会


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 トイレに立った客におしぼりを渡すため、廊下で待っていると胸を触られた。ライターの小川たまかさんが20代前半、座敷で客にお酌をするアルバイトをしていた際の被害を著書で明かしている

▼「水商売のアルバイトだからしょうがない。騒ぎ立てれば野暮(やぼ)」と当時は考えたという。だがその考えは「思い込まされ」だと記す。性被害を矮小(わいしょう)化し「ほとんどないこと」として扱う圧力が社会にある
▼俳優の香川照之さんが高級クラブで女性にわいせつな行為をしたと週刊誌が報じた。香川さんは事実を認め、テレビ番組で謝罪した
▼11日に那覇市で開かれたフラワーデモでもこの件について発言があった。参加者の女性は「被害女性に対し『仕事なんだから』という意見が出てくるのが残念だ」と話した。被害者に落ち度があることにするのは悪質なセカンドレイプだ
▼性犯罪被害者の9割以上を女性が占める。被害者の声を封殺しない社会にする鍵は男性が握っている。性被害が「ないことにされる」社会ではなく本当に存在しない社会にするために。