<金口木舌>「誠」の心で平和を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 心地よい三線の音色に、味わい深い歌声が重なる。10日に他界した琉球古典音楽の人間国宝・照喜名朝一さんは「仲風節」を愛唱した

▼歌い出しの「誠一つの 浮世さめ―」は「誠実の心一つこそが大切」を意味する。「誠心誠意、話し合うことが大事だということ。利害関係よりも、お互いの幸せのために最後まで粘り強く話し合うことだ」と説いた照喜名さん
▼2014年、本紙連載「未来に伝える沖縄戦」で自らの沖縄戦体験の全容を初めて語った。避難した壕や米軍の攻撃で全焼した祖母の家の跡などを案内し、同行した高校生2人に戦時下の様子を証言した
▼「仲風節」を演奏し「この歌を、この心を訴えていけば、戦争は起きないのではないか」とも伝えた。戦禍を経験したからこそ、平和の大切さをかみしめ、歌に思いを乗せた。今後も県内外、海外にいる数多くの弟子がその心と技を継ぐ
▼ロシアのウクライナ侵攻など、世界では今も戦禍に苦しむ人々がいる。平和への道を模索するためにも、照喜名さんが発信した「誠」の心を見つめ直したい。