<金口木舌>この能力は発揮したくない


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 物に新たな命を吹き込んだり、魅力あるものに変えたりと名称には命名者の人となり、気持ちが表れることがある。言葉の魔法だとつくづく思う

▼企業名や商品などの名称を表彰する日本ネーミング大賞も今年で3回目。生活文化を豊かに、産業発展に寄与するのを目的にする
▼大賞はカネテツデリカフーズ(神戸市)の「ほぼカニ」だった。カニそのものではないが、味も食感もズワイガニに似せたかまぼこに名付けた。値が張って縁遠くなったカニに近い商品をつくって人々の食卓を潤す。そんな気概を感じる
▼トマトは水やりを制限すると糖度が増す。うまさは抜群だが、日焼けのように黒い「尻腐れ」ができて見てくれが悪い。曽我農園(新潟市)は弱点を逆手に「闇落ちとまと」と名付けた。見てくれで判断すると真のうまさを食べ損ねる。審美眼の勧めだろうか
▼それにしても政治家が使命と志を見失うとろくでもない名称をつくり始める。「敵基地攻撃能力」に続いて「反撃能力」とか。能力はさまざまあれど、これほど発揮したくない能力もない。