車を運転中、動物の絵とともに「とび出し注意」と書かれた看板が目に入り、はっとしてアクセルを緩めた。北部支社に勤務した頃の体験だ
▼本島北部は面積が大きく、取材時の移動距離も長い。ついアクセルを踏んでしまうが、ここはブレーキを利かし、ゆっくり運転を心がけたい。ロードキル、動物の交通事故死を避けるためだ
▼絶滅が危惧される国指定天然記念物ケナガネズミの事故死が2022年の速報値で37件に上った。記録が残る1998年以降で最多だ。事故現場は生息域を東西に横断する県道2号が半数近くを占めている
▼人間の都合で造った道路を車が走る。動物にとっては迷惑な話だ。野生動物の通り道を道路の下に設けるなどの対策も進められているが、万全ではない。ならば「ゆっくり走ろう やんばる路」を実践するしかない
▼「とび出し注意」の看板は、自然を壊し便利さを追い求めてきた現代人への警告に思える。私たちの心にもブレーキが必要だ。季節は冬から春へ。ケナガネズミは子育てにいそしんでいるという。