<金口木舌>やちむんは笑う


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 2020年4月、コロナ禍はいよいよその姿を現し、不要不急の街路は静まりかえった。私たちの毎日は加速度的に打ちひしがれていった

▼社会は停滞した。その中に人の絶えたやちむん通りもあった。それでも時期が来れば新しいマカイやチューカーが元気に店先に並び、客を待った。その頃に触れたやちむんの変わらぬおおらかな表情を忘れまい
▼再建する首里城正殿の龍頭を「県内の陶工の手でつくりたい」と壺屋陶器事業協同組合が県に求めている。平成の復元は県外事業者が担った
▼記者会見や緊急集会の場に立った陶工たちは、いつも愛すべき器やシーサーを私たちに届けてくれるあの人この人だった。壺屋陶工の伝統技術や精神の継承のひとつの結晶として「壺屋で復元」がかなえられることを切に願っている
▼今、人並みの戻りつつあるやちむん通りを誇らしく思う。伝統とは何か、それをつなぐとは何か。時代の荒波の中で何百年と途切れず続く営為の尊さを、その天真爛漫(らんまん)さの奥にひっそりと抱え、やちむんは笑っている。