深夜はいかいを繰り返す少年を取材したことがある。友人と遊んだことを無邪気に話す半面、家族のことには口をつぐむ。母の再婚相手と不仲だと打ち明けてくれたのは、3度目の取材の時だ
▼手土産の缶コーヒーが気に入ったのか、夜の街を出歩いてもとがめない大人に気を許したのか。子どもの心の内を聞くのは難しい
▼県のヤングケアラー実態調査によると、家族の世話について誰かに相談したことがある児童生徒は2割弱だ。相談していいのかという遠慮や、相談しても変わらないという諦めが数字に見える
▼子どもの相談を受け止めるのは誰だろう。教員は人手不足で業務に追われ、支援の専門家であるスクールソーシャルワーカーはいつも学校にいるとは限らない。地域とつながることができない子どももいる
▼「否定しない大人に聞いてほしい。親身になって聞いてほしい」。子どもの心の叫びを調査の自由回答欄に見つけ、少年を思い出した。悩みを受け止めるのは難しい。でも声を聞いた以上、行動で応える大人でありたいと思う。