<金口木舌>道義はどこへ


社会
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 「道義の根本は人の悲しみがわかるということにある」。数学者、岡潔の「春宵(しゅんしょう)十話」にある。哲学者の鷲田清一さんが1日付朝日新聞の「折々のことば」で紹介していた。「リアルで、時に冷厳にさえ映る政治的決定も、根本はここになければならないと思う」と

▼道義を忘れていたか。2017年の東京都議選における安倍晋三首相の演説に思う。政権に異を唱える市民に向かって「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と応酬した。異論を排除するような態度にあぜんとした
▼ヘイトスピーチ反対団体の辛淑玉(シンスゴ)さんは排除と差別の標的にされた。番組「ニュース女子」で米軍基地に反対する「テロリスト」の「黒幕」だと報じたのだ。根拠なき事実で辛さんの名誉を傷つけたと最高裁も認めた
▼番組がまき散らした差別と憎悪は増幅を続ける。朝鮮人差別と相まって「今も心ない差別者から嫌がらせをされ続けている」と辛さんは語る
▼政治の言葉が劣化し、人の悲しみに思いが及ばぬ社会。「道義の根本」をどこに置き忘れてきたのだろう。