<金口木舌>「子供のため」で一体に


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 「『子どものため』という言葉は、呪(のろ)いの言葉なんです」。4年ほど前、ある教員が語っていた。職員会議で働き方改革を訴えても、その言葉が出ると誰も何も言えなくなるという。会議は「子どものために頑張りましょう」と締められ、業務削減の提案は霧散する

▼2000年代初期の構造改革や規制緩和により、教員も正規職員が減って臨時・非常勤に依存する体制になった。人員が乏しい中、学校は英語教育やキャリア教育、道徳教育など新たな取り組みを求められた。さまざまな要因が絡み、今の深刻な教員不足が生まれた
▼本紙主催のシンポジウム「教員不足 打開への一歩」で、慶応大の佐久間亜紀教授は政策的要因や社会的要因を解きほぐした上で「誰か悪い人がいるわけではない」と強調した。求められるのは、犯人捜しよりも打開に向けた取り組みだ
▼国、県、市町村、学校、PTA、地域、企業、それぞれが知恵を絞る必要がある。「子どものため」は学校に負担を強いる呪いの言葉ではなく、各分野が一体となるためのキーワードだ。