<金口木舌>事故は過去ではなく今も


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 燃料を浴び、火だるまになって教室から飛び出す児童。うるま市石川の宮森小学校を襲い、児童ら18人の命を奪った米軍ジェット機墜落事故の惨状だ

▼宮森幼稚園の園児だった新里節子さんは頭蓋骨損傷などの重傷を負い、手術で頭にプラスチックを入れた。6年前にくも膜下出血で手術しようとしたが、プラスチックの存在が理由でできなかった。現在、失語症に苦しんでいる。こんな理不尽があろうか
▼教師に注意され、教室を飛び出しブランコに乗っていた児童が、爆風で命を奪われた。教師は本人の非ではないのに、自責の念を抱えて生き続けた
▼事故を語り継ぐ「石川・宮森630会」の久高政治会長(事故当時5年生)が先日、うるま市立伊波中学校で講話した。「沖縄はまだ戦争が終わっていない。戦争の延長線上にある」。苦しみをそう表現した
▼久高さんはワイツゼッカー元ドイツ大統領の言葉を引用し、風化に警鐘を鳴らす。「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」。事故からきょうで64年。講話中も空にジェット機の音が響いた。