<金口木舌>ンマと沖縄と平和


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 戦前の沖縄は人口当たりの馬の頭数は全国で一番多かった。県民の4人に1人が命を落とした沖縄戦は馬にも犠牲を強いた。日本軍に軍馬として徴用され、実に4頭に3頭が死んだ

▼沖縄の馬は外交を支えた。揺れが少ない独特の歩行法で、中国の使節団を首里まで運んだ。1家に1頭いた馬は農業も人の移動でも活躍した
▼馬が水を飲み、水浴びをした湧き水が各地にあった。例えば読谷村牧原は牧場が語源となった集落だ。近くの湧き水は今、米軍由来とされる有害物質PFOSに汚染されている
▼戦後、耕運機や自動車の登場で馬の出番が失われ、沖縄の頭数は全国一少ない水準まで減った。沖縄の在来馬文化に詳しいスポーツニッポン競馬専門委員の梅崎晴光さんは沖縄の馬は人間の歴史に翻弄(ほんろう)されてきたと指摘し、「馬たちは人間に愛されているから生きていける」と語る
▼多くの馬の命を奪った戦争も人類愛の対極にある。この夏休み、沖縄こどもの国で小学生を悠々と背中に乗せるヨナグニウマを見た。平和と愛にあふれた光景だった。