<金口木舌>喜如嘉住民の人情美


<金口木舌>喜如嘉住民の人情美
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 戦前まで、大宜味村の喜如嘉に「アラミ」という風習があった。旧暦の8月になると、山の中腹や小高い丘に小屋を建て、伝説の生き物ブナガヤの出現を待った

▼社会運動家で立法院議員を務めた喜如嘉出身の山城善光さんの著書「不思議な火をともす怪奇動物 ブナガヤ実在証言集」に記述がある。山城さんは晩年、ブナガヤ研究に没頭した
▼喜如嘉の写真集をめくると、ウスデークを踊る女性らの脇に大きな木が立つ。台風6号で倒れた喜如嘉公民館のガジュマルだ。一時は伐採が決まったが、県外企業がもらい手となり、生かして活用することになった
▼木が倒れた後、区内の話し合いで「この木はブナガヤのすみかだ」という声が上がった。喜如嘉を離れる前に木の枝を十数本分けてもらい、区民が育てていくという
▼10日に開かれた木の「お別れ会」。130年あまり、歴史を見守った木の思い出話は尽きなかった。山城さんはアラミの風習を「この地域の住民の人情美を証拠立てるものだ」と書き残す。木への愛情、心意気に触れる思いがした。