<金口木舌>戦後世代が語り継ぐ「ひめゆり」


この記事を書いた人 琉球新報社

 ひめゆり平和祈念資料館の活動を伝える冊子「資料館だより」の60号が届いた。1989年の開館から今日まで証言員として活動した元学徒30人を、顔写真入りで紹介している

▼顔写真が並ぶページをめくっていて、沖縄戦で亡くなった学徒の遺影が並ぶ資料館の展示室を思い出す。10代だった学徒たちの短かった人生を思う鎮魂の場だ。存命ならば社会で活躍し、子や孫に囲まれた生活を送っていたであろう
▼証言員は、戦場に倒れた学友の分まで生きるという人生を自らに課したのではないか。そのことが証言活動につながったはずだ。証言員にならなかった元学徒も同様の心境であったに違いない
▼「資料館だより」には学徒隊の引率教師だった仲宗根政善さんの日記も載っている。80年4月18日付では普天間飛行場を発着する米軍機の爆音に憤り「本土は、沖縄のいたみはすこしも感じてはない」と記している
▼戦後生まれの館長誕生が話題となった。これまでも高齢の証言員に代わり若い説明員が証言活動の一端を担ってきた。亡き学友の魂と向き合い、平和を説く証言員の歩みは戦後世代に引き継がれている
▼元学徒の願いとは正反対の方向へと日本は進んでいる。73年前、身にしみて感じたであろう戦争の悲惨さを今一度思い起こすときだ。戦後世代に引き継がれた資料館の使命はいよいよ重みを増している。