棕櫚(シュロ)の花は夏の季語だ。古代ローマでは、その葉は勝利の証しとされ、戦いに勝った者が手にした。棕櫚の葉をかざす栄誉を目指せと若者を鼓舞する歌がある
▼誰でも耳にしたことのある旋律は古関裕而作曲、加賀大介作詞の「栄冠は君に輝く」。全国高校野球選手権の大会歌である。詞は1948年、30回大会の際に全国公募された
▼作詞の加賀は元球児。試合中のけがで足を切断し、プレーできなくなった。5千点を超える応募から選ばれた詞は試合ができる喜び、観戦できる平和をたたえるように聞こえる
▼沖縄大会は例年、慰霊の日と重なる。ことしも正午には試合を中断し、球児らが黙とうをささげた。「栄冠は…」が歌い継がれていることと併せ、夏の甲子園に鎮魂や平和を希求するメッセージ性を与えているように感じる
▼振り返ると10年ごとの記念大会はなぜか県勢の好成績が多い。40回大会に首里が初出場し、50回は興南旋風だ。60回まで3年連続で豊見城が8強進出。70回では沖縄水産、90回で浦添商が4強入り。沖水の2年連続準優勝、興南の春夏連覇など偉業の足掛かりとなってきた
▼さて今年は100回記念大会。代表を目指す戦いが始まっている。まずは目の前のプレーに集中し、最善を尽くしてほしい。ひたむきな姿勢が人々を引きつけ、感動を呼ぶ。高校野球の未来を拓(ひら)いていくことにもなる。