<金口木舌>重要な情報は隠されているが、アピールは熱烈。透明が売りだが、・・・


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 重要な情報は隠されているが、アピールは熱烈。透明が売りだが、何かは分からない。近年、日本で流行した2種類の商品だ。どちらもよく売れた

▼2年前、注目されたのが「文庫X」。岩手県盛岡市の書店が、ある本の題名、内容を特製カバーで隠して販売した。人気を集め、全国の書店に波及した。「読んで心を動かされない人はいない」。店員一人の熱い推薦文でカバーは埋められている
▼本は清水潔氏のノンフィクション「殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件」。「文庫X」だから買ったという人も多い。特製カバーなしで購入した後、同じ本と気付かず、重ねて手に入れたことを思い出す
▼新商品が出続けるのが、透明な清涼飲料水だ。色のあるヨーグルトやミルクティーが無色。意外性から思わず手に取る。ネットでは水以外飲むことができない職場や学校で需要がある、との臆測も流れる
▼常識を逆手に取るアイデアで、発案者には拍手を送りたい。透明さを前面に出しているが重要な情報は隠す。商品を売る戦略ならいいが、政治となると別だ
▼森友学園や加計学園など数々の疑惑が浮上した。丁寧に説明するとしながら肝心なことは隠したまま。野党の反対など意に介さず重要な法案を次々通す。支持率が下がらないのは不思議だ。流行には乗っても、物事の本質を見極める力は身に付けたい。