<金口木舌>女優の終演


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 自らの信念を貫き通した末の人生の終幕だった。見事な締めくくりに爽やかさを感じる。樹木希林さんが15日亡くなった。テレビや新聞各紙は個性派女優の逝去を大きく報じた

▼「全身がん」と公言してきた。今年8月、一時危篤に陥った。娘婿で俳優の本木雅弘さんを通じて「細い糸1本でやっとつながってる 声一言も出ないの しぶとい困った婆婆(ばば)です」というコメントを出した
▼ユーモアを交えて闘病を語ってきた。病と老いを受け入れ、自らの死期を見つめながら生きてきたからこそ、なせる業だ。それは女優業でも発揮された。演じる役を通じて、私たちは生身の樹木希林を垣間見た
▼国の行く末を憂い、発言してきた。女優業を続ける上で勇気のいることだったはずだ。2015年夏、ドキュメンタリー番組の収録で名護市辺野古を訪れたのも、本人には自然のことであったろう
▼16年3月のトークショーで「私はね、大変な思いをしている沖縄を、自分が語れるか。内地だと、皮膚感覚で問題を感じられない。無知を恥じているんですよ」と発言した。この思いを多くの人が共有できれば、国のかたちは変わっていくはずだ
▼安室奈美恵さんの引退日と樹木さんの訃報が重なった。2人の「格好よさ」は人を引きつける。強い意志に支えられた樹木さんの生き方、去り際のすがすがしさに拍手を送る。