<金口木舌>全力疾走の理由

 全力疾走の走塁が印象的なのは米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手だ。凡打でも懸命に駆ける。ひたむきさが共感を呼ぶ。理由は仲間への思いにあると言われる

▼出身校の岩手・花巻東高は強豪校の例に漏れず、部員の多さで知られる。背番号がもらえない約100人の仲間のために、活躍の機会を得た選手は全力疾走が「義務」だと教えられる
▼優勝報告で沖縄市役所を訪れた美原小の女子ミニバスケットボールクラブのメンバーに、比嘉良憲教育長がこの話を語って聞かせた。周囲に感謝することが大切と言われ、児童は引き込まれるように聞いていた
▼米国のファンには、フォースアウトが確実なのに懸命に走るのは無駄だと考える人がいるかもしれない。実は花巻東の全力疾走の奨励にはもう一つの教えがある。それは打者走者の「権利」であるということだ
▼失策の可能性に賭けることでもあるだろう。打球を転がすことで得た走塁の権利を行使する姿勢の表れとも言える。全力疾走はグラウンドに立つ選手の自由を表現しているようで、すがすがしい
▼安倍晋三首相は4項目の改憲案を臨時国会に提出する意向だ。改憲が政治日程として具体化していく。そもそも憲法がうたう国民の権利は十分に行使されているのか。憲法を生かすことができているのか。私たちの姿勢は将来の世代に向けて問われている。