<金口木舌>誰のための芝居?

 「秋麗(あきうらら)」は春のようにうららかに晴れた日を言う秋の季語。高く澄んだ空が行楽へと誘う。季節は真逆だが、かつて女性たちが年に一度の行楽で浜に繰り出したのは旧暦の3月

▼浜下りでの男女の出会いから描かれる琉球歌劇に「薬師堂」がある。かなわぬ恋を知った男がせめて名を上げようと挑むのは琉球の官吏登用試験。首席である一番科(こう)を取ってみせる
▼現代日本で言えば、国家公務員採用総合職試験への上位合格に当たるだろうか。最高学府で勉学を修め、国家行政に携わるキャリア官僚の皆さんだ。その法解釈にバツ印が付けられた
▼新基地建設を進めるため行政不服審査法を用いた国の手法のことだ。全国の行政法の専門家、研究者110人が「国民のための権利救済制度の乱用」と指摘し、同法に基づく防衛局の申し立てを「違法行為」と断じた
▼短期間で賛同者が集まった。「いくらなんでもひどい」と声を上げた学究の矜持(きょうじ)である。行政府の皆さんには朱の色鮮やかに落第の印が押されたと言える。易しく説明されれば子どもにも分かるまやかしだ
▼「薬師堂」を書いた伊良波尹吉の作品が琉球新報ホールでかかった。今に続く歌劇人気の理由はてらいなく描かれた人間模様だろう。他方、横車を押す権力が支持されるはずがない。全体の奉仕者は、下手にけれん味を利かせた芝居を誰のために演じているのだろうか。



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