<金口木舌>昆虫学者の怒り


社会
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 公立図書館の沖縄関連書籍の本棚には、この人の名を記した昆虫図鑑が並んでいる。沖縄の昆虫を研究し、自然保護を説いてきた琉球大名誉教授の東清二さんが亡くなった

▼辺野古沿岸部への土砂投入に反対する県民大会にメッセージを寄せた。「沖縄にはもうこれ以上、軍事基地はいらないです」「私は翁長知事の埋め立て承認の撤回を支持します」という訴えに共感の拍手が湧いた
▼沖縄防衛局が設置し、自身が副委員長を務めた辺野古環境監視等委員会を厳しく批判した。新基地建設ありきで「環境監視」の機能を果たしていないことへの憤りである。「何も調べていない」と怒りを込めた
▼「自然保護ということばが流行している今日、私たちはその自然を理解する努力をしなければならないと思う」。東さんは1975年の著書にこう記した。復帰後、急速に進んだ自然破壊が念頭にあったのだろうか
▼40代前半だった東さんの信念がにじむ。それを追求する以上、新基地建設のレールに乗った委員会の運用は許せなかったはずだ。委員の辞職をもって防衛局にあらがった
▼東さんが遺したメッセージは届かないのか。防衛省は今月中旬、辺野古沿岸部に土砂を投入する。「あんな広い藻場は他にないです。それを埋め立てるのは自然破壊そのものです」と辺野古の海を憂えた研究者の訴えを無視してはならない。