<金口木舌>初夢


社会
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 座敷に据えられた高足の膳に白みそ汁の雑煮、羽織はかまを着けてとそをたしなむ。書き初めを済ませて年始回りへ。かつての日本の正月のスタイルだろうか。正岡子規が「初夢」で描いている

▼今、そんなスタイルで過ごしている人がどれくらいいるだろう。百貨店などでおせち料理も売られている。食材を調達できないので、日持ちする料理を用意していたのがおせちだが、昨今は元日からスーパーも開いていて何でもそろう
▼ただ今年は少々事情が違うらしい。人手不足を反映し、元日は店を閉めるコンビニも出てきている。これもご時世か
▼正月といえば、子どものころ父に連れられてたこ揚げに興じたことを思い出す。以前赴任した石垣島ではピキダーなど独特のたこ文化が楽しかった。昨年末も正月飾りと併せてたこを売る風景を見たが、たこ揚げができる空は昔より狭くなってきている気がする
▼初夢にも、大みそかから元日にかけて見る夢と、元日の夜見る夢、2日の目覚めに見る夢、などと諸説あるらしい。枕の下に、宝船の絵と縁起のいい回文を敷いて寝ると、良い夢は正夢に、凶夢は獏(ばく)が食べるとされる
▼子規の「初夢」は雑煮もとそも実は夢だったというのが落ち。それでも続いていた体の節々の痛みが薄らぎ、喜ぶ様を描いている。さて、沖縄が背負わされる痛みは今年こそは和らぐだろうか。