<金口木舌>1週間だけの昭和64年


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 年が明けて1週間。きょうの献立で七草がゆ、または沖縄らしくフーチバー入りのボロボロジューシーの人もいるのでは

▼昭和64年は1週間だけだった。30年前のきょう、昭和天皇が逝去された。自粛ムードに包まれ、各行事が取りやめとなった。全国高校ラグビー大会の決勝は行われず両校優勝に
▼当時、神道形式による皇位継承儀式への国費支出を巡って、現憲法下の「政教分離の原則」に抵触するか否かが議論となった。皇位は世襲制で、公的性格があるとして政府は国費を充てた
▼5月の代替わりでも前例が踏襲される。重要祭祀(さいし)の大嘗祭(だいじょうさい)について秋篠宮さまが昨年11月、「宗教色が強いものを国費で賄うのが適当かどうか」と指摘し波紋を広げた。戦後、憲法における天皇の地位は「国の元首」から「国民統合の象徴」へと変わった
▼2年前のきょう、沖縄戦で学徒兵だった儀間昇さんが89歳で亡くなった。戦後、米兵となり復帰前の沖縄に駐留した。皇民化教育に触れた言葉が印象に残る。「天皇は神、国には逆らうなと教え込まれた。僕らは洗脳されていた」
▼先月、天皇陛下は誕生日会見で沖縄などに触れ「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに安堵(あんど)している」と語った。昭和の時代、天皇が教育や宗教、政治と結び付く怖さを私たちは学んだ。沖縄と憲法、天皇を見詰め直す1年になる。