<金口木舌>予期せぬ発見


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 セレンディピティとは予期せぬ発見に出くわすこと。偶然の重なりで幸福をつかみ取る同名の恋愛映画があった。単純な偶然を言うのではない

▼どちらかと言うと、経験や努力の積み重ねを前提とし、幸運を見つけられる能力の方を指す。何もしないで飛び込んでくるラッキーというわけではない。まさにそういう努力がもたらした発見とも言える
▼中城城跡で見つかった従来より古い時代の城壁だ。14世紀後半とされた築城が14世紀前半へとさかのぼることになる。国指定史跡の中城城跡は調査のためであっても現状の変更は難しい
▼現在の城壁に傷みが見られたため、中城村教育委員会の申し出によって許可された解体作業の中での発見だった。見つかった城壁は19世紀末などの近代に新設された城壁に覆われていた。当時も傷みが出てきた古い城壁を保護しようとしたようだ
▼崩落の危険を防ぐ狙いであって、文化財を残そうという意味ではなかったかもしれない。結果として21世紀へと古い城壁をつないでくれた。沖縄考古学会の當眞嗣一顧問は「何かを守ることの大切さを教えてくれている」と話す。2月4日から積み戻される
▼戻す方が難しいらしく時間がかかるだろうが、戻されれば再び見られることはまずない。琉球の石造技術に触れ、つないできた人々の息吹に思いをはせる、またとない機会である。