<金口木舌>2カ月と10日の命

 2カ月と10日の命だった。764グラムの超低出生体重児で生まれた貴陽(たかはる)ちゃんの短い人生をつづった辻聖郎さんの「いつか貴い陽のしたで」は、苦悩を抱えながら愛情深く貴陽ちゃんを見守る両親と姉の姿を描く

▼心臓病を抱えながらも両親は元気で退院する日を夢見てきた。だが救命は困難で両親はみとりを選び最期を家族で過ごす。「生きていることは当たり前のことではなくて、ありがたいことなのかもしれない」
▼この本を読んだ福井県立藤島高校2年の久保田琉仁(りゅうと)さんが、本年度の全国高校生読書体験記コンクールで最高賞の文部科学大臣賞に選ばれた。自身も903グラムの超低出生体重児として石垣島で生まれた経験と重ね合わせて「命をみつめる旅」に出る
▼本との出合いから自身が生まれた石垣の病院を再訪する。亡くなった貴陽ちゃんと、健康に暮らす自身とを比べ「いろんな奇跡が重なり合い、私は今、生かされている」と改めて実感する
▼石垣の病院内で精いっぱい生きている赤ちゃんを見て「死ぬまでの一日一日が、与えられた尊い時間なのだ」と気づく。これからの人生にどう向き合うかを考えさせられたようだ
▼本の中に「産まれてきてくれてありがとう」と貴陽ちゃんに感謝する場面があった。後を絶たない子どもの虐待死に思う。かけがえのない命を授かった喜びと畏敬の念を忘れたくはない。









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