<金口木舌>待機児童対策と保育を受ける権利


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 子どもたちがはだしで走り回り、リズム遊びをする西原町の「こばと保育園」に、わが子を通わせる親たちは突然の「強制退園」の宣告に戸惑った

▼認可外保育所だった同園は、2019年度に認可保育所「こばとゆがふ保育園」に移行した。町はそれに伴い、「町内の待機児童解消が優先」と、広域から通う園児の強制退園を示唆していた
▼同園は、埼玉県のさくら保育園・さくらんぼ保育園の創設者、斎藤公子さんが提唱・実践した独自の保育を取り入れる。0~6歳児の一貫保育など「斎藤公子保育」を忠実に実践するこばと保育園に魅力を感じた親たちは、保育方針が継続される新設園で卒園できるものと期待していた
▼かたくなに町内の待機児童優先を掲げた西原町だが、町外の園児の継続保育を認めた。預けっ放しではなく、保護者の関わりを強く求める園の方針が敬遠され、定員に空きが出たからだ
▼広域から子を送り迎えする親がいる一方、町内では入園を見合わせる保護者も。保育の特色や親の通勤事情を考えると、各市町村だけで親のニーズに対応できる時代ではない
▼県内の待機児童は18年10月の時点で3275人。県は本年度末までに待機児童ゼロを掲げるが、ハードルは高い。きょうから新年度。市町村単位で競うのではなく、県全体で「保育を受ける権利」を守ってこそ、親は安心して働ける。