新元号「令和」に沸く一方で、平成、昭和よりも昔から伝わるしきたりに反するという力士の振る舞いが騒動となっている。大相撲春場所の千秋楽、横綱白鵬が優勝インタビューの直後に三本締めをした一件
▼場所を締めくくる伝統の「神送りの儀式」に先立つ手締めは問題だという。日本相撲協会に呼び出された白鵬は「平成最後の場所ということで、盛り上げようと思って締めた」の弁。少々分が悪そうだ
▼大記録を打ち立てた貫禄ある横綱だが、行動や発言が時々物議を醸す。千秋楽での万歳三唱が批判を浴びたことがあった。今回もテレビで見ていて「おやっ、大丈夫かな」と気になった。案の定、懲戒処分が取り沙汰されている
▼正直言えば場内が一つになった三本締めの大合唱には爽快感も覚えた。平成後期の角界を引っ張ってきた大横綱の呼び掛けならば納得する人もいるだろう。もしその場にいれば、当方も唱和していたかもしれない
▼平成の終わりを生きる私たちの周りに世知辛い話があふれている。威勢良い三本締めで吹き飛ばしたくなるのも人情だ。不条理を肌身で感じてきた沖縄ではなおのこと。しかし、それだけでは済むまい
▼忘れたいこともあるが、それ以上に記憶にとどめなければならないことも多い。平成の終わりと令和の始まりをどう迎えるか。横綱の三本締めに接し、ふと考える。