<金口木舌>小さな変革は教育から


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 紙幣が20年ぶりに刷新される。5千円札に採用されたのは、津田塾大学の創立者で女性教育の先駆けとなった津田梅子だ。1871年末、「岩倉使節団」の一員として渡米した。当時6歳、日本の女性初の留学生だった

▼帰国後の1900年、のちに津田塾大学となる「女子英学塾」を創設し、女性の教育に情熱を注いだ。留学体験から、日本の女性が置かれている状況に驚き、地位を高めなければとの思いを募らせていた逸話もある
▼男女共同参画社会が叫ばれて久しいが、教育現場は道半ばだ。県内の小中高校で2018年度、女性が教頭以上の管理職を務めている割合は小学校教諭22・0%、中学校16・2%、高校10・4%にとどまっている
▼長時間労働が常態化する中、家事、育児、介護を担う機会の多い女性が、責任の重い管理職をためらうとの指摘もある。力量があり希望するなら、管理職への道が開ける仕組みづくりが求められる。長時間労働の解消も急務だ
▼性差の偏りがなくなれば、多様な物の見方、考え方が生まれやすくなる。学校は社会とつながる入り口だ。多様な価値観の中で育った子どもたちは、性別にとらわれない生き方へと視野を広げるだろう
▼津田が目指したのは「男性と協同して対等に力を発揮できる女性の育成」。互いの「らしさ」を認め合える社会だ。社会の変革は教育から始まる。