アルトゥール・ルービンシュタインとウラディミール・ホロヴィッツ。共に20世紀を代表するピアノの巨匠である。二人はある時期を境に関係が疎遠になった
▼ホロヴィッツがルービンシュタイン夫妻を昼食に招待したことを失念し競馬に出掛けようとしていたからだ。謝罪もなかったことから、ルービンシュタインをして「二度と話したくない」と言わしめる間柄になった。「ルービンシュタイン自伝 神に愛されたピアニスト」に顚末(てんまつ)が記されている
▼たとえ険悪な関係になっても個人対個人の問題ならそれで済むかもしれない。周りへの影響は限定的だ。国対国だと話は全く違う
▼米中の二大経済大国による貿易戦争である。トランプ米大統領は「習近平国家主席を大いに尊敬している」と言いながら、不公平な貿易慣習を終わらせるとして、中国への圧力を強めている。両国が制裁措置を繰り返せば、日本経済も大きな打撃を受ける
▼米国の著名記者ボブ・ウッドワード氏の著書「恐怖の男」を読むと、トランプ氏が言い出したら聞かない気性であることがよく分かる。国務長官だったティラーソン氏は「あの男はものすごく知能が低い」と嘆いたそうだ
▼米国は日本にも対日貿易赤字の削減を強く迫ってきた。超大国の横暴と映る。いさめる手だてはないものか。追従(ついしょう)で応じるばかりでは増長させる一方だ。