雨の勢いが増していく。瞬く間に道路は冠水し水位は腰の高さに達した。通りかかった人と協力し、動けなくなった車を安全な場所まで押した。十数年前、沖縄市山内での出来事
▼同市知花の住宅街では、地面に足が届かないほど冠水し、首の高さまで水に漬かりながら取材した。目の前にはトラックが水没していた。恵みの雨は時として生活の場を容赦なくのみ込む
▼13日、与那国島上空で雨雲が局地的に発達し、気象庁は50年に1度の大雨の恐れがある「記録的短時間大雨情報」を発表した。ここでもトラックは水没し、サーフボードに荷物を載せて移動する住民もいた
▼この数年、「50年に1度」といわれる災害を幾度となく見聞きする。県内でも急な河川の増水で、幼い児童が側溝や橋の上から流され、亡くなる事故が度々起きた。危険は日常の足元に潜む
▼1時間に50ミリ以上の大雨はバケツをひっくり返した水の勢いに例えられる。温暖化の影響か、50ミリ以上の雨の発生回数は右肩上がりだ。気象庁が統計を始めた1976年からの10年間と比べ、2009~18年の平均年間発生回数は約1・4倍に増えた
▼17年の九州北部、昨年の西日本豪雨による甚大な被害は記憶に新しい。沖縄も梅雨入りした。家の周りの水はけをよくする。危険箇所を普段から把握する。周囲を見渡そう。それだけで防げる被害がある。