<金口木舌>マナーを疑ってみる


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 パンプスやハイヒールの着用を「女性のマナー」として強制するのはやめてほしい―。グラビア女優でライターの石川優実さんの呼び掛けに、オンラインサイトで1万8800人超の署名が集まった

▼石川さんは葬儀場でのアルバイトでパンプスを履くように言われ、足を痛めた経験がある。署名と要望書を厚生労働省に提出し「企業が着用を女性のみに命じることは性差別。禁止するという法規定をつくってほしい」と訴えた
▼社会の中で定着しているマナーがある。女性なら化粧やスカートの着用、男性ならスーツに革靴など。場に応じた服装や振る舞いが求められる場面はあるのだろうが、本当は必要なかったり、強制されたりして、負担に感じる人も多い
▼切実な要望を踏みにじるような発言が根本匠厚労相から飛び出した。パンプスを強制する職場に対して「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲」と容認するような考えを示した
▼パンプスは、人によっては外反拇趾(ぼし)や腰痛を引き起こし健康を害する恐れがある。厚労相の発言は女性に対する無理解の現れだ
▼石川さんは「多くの女性が困っているが、個人的な問題だと思わされ、マナーだからと何も言えずにきた」と語る。当たり前とされているマナーを考えてみる。しなくてもいい我慢をしないでいい社会は誰にとっても生きやすいはずだ。