<金口木舌>広がる「京アニ」支援


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 放火の被害に遭った京都アニメーションを支援する動きが、国境を越えて広がっている。同社は支援金を受け入れる口座を開設した。犠牲者の家族や負傷者の補償などに充てる方針だという。口座番号はホームページで公表されている

▼支援が広がる様子から「京アニ」のブランドで質の高い作品を発表し、ファンの心をつかんできたことが分かる。作品の舞台となった土地を旅する「聖地巡礼」ブームを巻き起こしたことでも知られる
▼同社は業界が抱える課題にも向き合った。女性スタッフを多く採用し、従業員の出産や育児を支える態勢を整えるなど、過酷と言われるアニメ制作現場の働き方を改革した。「人を大切にし、人づくりが作品作り」との企業理念を掲げる
▼支援の急速な広がりの背景に、そんな象徴的な場所が標的になったことへの怒りや悲しみがあるのだろう
▼同社がアニメーション制作を手掛けた「CLANNAD(クラナド)」に、ヒロインの古河渚が「私たちはどんな困難にも力を合わせて立ち向かっていける。結果がどうあれ、私たちは思いを一つにしたのだから」と語る場面がある。長期病欠で高校を留年した渚が、演劇部を作り仲間とともに弱さを乗り越える物語だ
▼支える輪の広がりは、同社が作品を通して投げ掛けてきた前向きなメッセージへの、多方面からの応答のように思える。