<金口木舌>夏に花火大会、その理由は…


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 時は戦乱の世。豊臣秀吉による小田原の北条氏征伐の前年、東北の雄、独眼竜の伊達政宗は、唐人(中国人)による花火を楽しんだ。これが史料で確認できる日本で最初の花火観賞らしい(福澤徹三著「花火」)

▼大きな爆発音を天空にとどろかせ、赤や青、緑、白の色とりどりの花火が夜空を彩る。うちわ片手に浴衣姿の観客の姿と合わせ、夏の風物詩となっている
▼この時期、全国各地で花火大会が催される。日本三大花火大会の一つに数えられる新潟県の長岡まつり大花火大会を見た。花火の迫力はもちろん、8月2、3の両日で過去最多となった108万人の見物客にも圧倒された
▼きらびやかな花火に人は魅了されるが、もともと長岡の花火大会は戦後の復興祈願から始まった。1945年8月1日、米爆撃機B29が1時間40分にわたり長岡の街を空爆。市街地の約8割が焼け野原となり、1488人が犠牲になった
▼終戦の翌年に長岡復興祭を開催、その翌年に戦争中に禁止された花火を再開したが、戦中の爆撃を思い起こさせると反対の声も上がったという。花火大会の前日1日には慰霊と復興への感謝、恒久平和を願い、白一色の尺玉3発を打ち上げる
▼どーんと大きく咲いて、ぱらぱらと散っていく。華やかさをめでる人があれば、亡き人を悼む人もいる。さまざまな人の思いを乗せて、花火は上がる。