<金口木舌>富士山と島小


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 開戦直前のイラク訪問、政界進出に知事選出馬と、喜納昌吉さんの行動と発言にはいつも驚かされてきた。自身のアイデンティティーに関する今回の発言にもびっくりした

▼自分のDNA型を調べてもらったところ「あなたは純粋な日本人」との結果が返ってきたといい、最近は日本人のアイデンティティーを認識するようになった。根っからの島小(しまーぐわー)ではなかったか
▼昌吉さん初期の名作「島小ソング」を思い出す。「心やしてぃんなよ 情やしてぃんなよ 我んねー島小」というリフレインが耳朶(じだ)に残る。39年ぶりに発表した新曲のタイトルは「富士山Japan」。島小は今、富士山を仰ぎ見る
▼都内で開かれたイベントで「世界が非常に不安定だから、日本の魂が求められている気がする」と語った。過去の言動からの飛躍は大きい。賛否は分かれよう
▼喜納さんの「ハイサイおじさん」と「馬車小引んちゃー」に沖縄の原風景を見る。沖縄戦で心を病んだ男性が「おじさん」のモデルと聞く。馬車引きや魚売りの会話に心が和む。喜納さんの歌や行動の源であったろう
▼与那国島の東端にある岬を歌った「東崎」で喜納さんは人や自然との共生の心を説いた。それこそ「ウチナー対ヤマト」という図式を超え「世界の不安定」の中で求められるものだ。東崎に打ち寄せる波の音は、今も喜納さんの胸に響いているだろうか。