タレントの中川翔子さんの著書「『死ぬんじゃねーぞ!!』いじめられている君はゼッタイ悪くない」は、10代で受けたいじめの体験が基になっている。漫画やアニメの絵が好きなことなどを「キモい」と言われ、クラスで孤立し、中学3年生の終わりに不登校になった
▼17歳の頃には、嫌な出来事が重なり衝動的に死にたいと思うときもあった。その体験をつづり「今のいじめはSNSの普及でもっと多様化している」と語る
▼10代は希望にあふれた年代だと、多くの大人は考えがちだろう。現状は違う。厚生労働省によると昨年、薬物依存などで治療を受けた10代患者の4割以上が、せき止めなどの市販薬を乱用していた
▼生きづらさを抱えた若者が、意欲を高めるために乱用するケースが多い。専門家は「多くは快楽を求めているわけではない。親がアルコール依存や育児放棄などの問題を抱え、相談できずにいる若者もいる」と指摘する
▼厚労省の統計では日本人の10代前半の死因は自殺が1位。自ら未来を閉ざす子どもがいる社会はあってはならない。大人社会の病理が子どもの閉塞(へいそく)感に連なっているのではないか
▼「死にたい夜を越えた先に、心が震えるほどに『良かった!』と思えることが待っている」と中川さんは呼び掛ける。子ども・若者から目を離さない。SOSを受け止める環境が危機を減らす第一歩だ。