<社説>嘉手納基地に無人機 さらに危険と負担が増す


<社説>嘉手納基地に無人機 さらに危険と負担が増す
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 海上自衛隊鹿屋航空基地に昨年11月から暫定配備されている米空軍の無人偵察機「MQ9」が来月、米空軍嘉手納基地に移駐されようとしている。防衛省が嘉手納基地周辺の沖縄市、嘉手納町、北谷町に説明した。

 同機は鹿屋基地でオーバーラン事故を起こしており、事故の危険や騒音など、周辺地域の負担が増えることは確実だ。中国軍の動向監視が目的であることから、軍事的緊張もさらに高まる。このように基地負担が際限なく増えていく状況は耐え難い。
 防衛省は、同機は滞空時間が32時間と長く頻繁な離着陸がないこと、戦闘機に比べて騒音が少ないことなどを強調した。説明を受けた渡久地政志北谷町長は「基地機能強化は受け入れ難い。今回の措置の期限を明確にしてほしい」と申し入れたという。
 鹿屋基地へは1年間の暫定配備とされていて、嘉手納移駐は、11月20日に期限が来ることに応じた措置だ。8機全てと、100人程度の部隊が移る。今月中から一部機材、人員の移動が始まる。嘉手納での配備期間は決まっていないという。鹿屋基地への暫定配備は、嘉手納配備への地ならしだったのではないか。
 海上保安庁は青森県の海上自衛隊八戸航空基地で、昨年10月から同じ機種を運用して収集情報を海上自衛隊と共有しており、共同運用を目指している。自衛隊と米軍の間でも、収集した情報を共同で分析する「日米共同情報分析組織」が昨年11月に発足した。日米軍事一体化に海保も組み込まれつつある。
 同機は全長約11メートル、主翼幅約20メートルで、セスナ機より一回り以上大きい。周辺自治体への説明で防衛省は「十分な安全確保が講じられている」と強調したが、鹿屋基地では8月に滑走路をオーバーランして地上施設に接触した。1カ月以上飛行を停止し、5日に再開したばかりだった。
 嘉手納基地では今年、防錆(ぼうせい)整備格納庫の移設が強行されることになった。外来機の飛来も相次ぎ、爆音をまき散らしている。いずれも「説明」だけで地元自治体の頭越しに進められてきた。PFAS汚染についても立ち入り調査ができない状況が続く。そこへ、さらなる機能強化だ。
 今年3月、戦争が続くロシアとウクライナの間の黒海上空の国際空域で、米軍のMQ9が墜落した。ロシアのスホイ27戦闘機が2機接近し、1機目が燃料を浴びせかけ、2機目が無人機のプロペラに衝突した。ロシアは接触を否定し、無人機の飛行は挑発だと非難した。米軍は映像を公開し、抗議の応酬となった。
 嘉手納に配備されれば、監視の対象となる中国側も対抗措置を取るだろう。黒海のように、スクランブル発進した戦闘機との間で不測の事態が発生する危険が増す。基地負担増加に加え、戦場になる危険をより高める無人機配備を容認するわけにはいかない。