<社説>日中平和条約45年 武力解決放棄を順守せよ


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<社説>日中平和条約45年 武力解決放棄を順守せよ
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 日本と中国が善隣友好の精神をうたう日中平和友好条約の発効から今月で45年を迎えた。条約は第1条の1で主権・領土保全の相互尊重、相互不可侵を基礎に恒久的平和友好関係を発展させるとした。

 第2条で両国は覇権を求めず、覇権確立のいかなる試みにも反対すると明記。第3条は経済、文化関係の発展と両国民の交流促進を掲げる。
 日中関係の現在をみる時、非常に重要な合意である。特に第1条の2は、全ての紛争を平和的手段で解決し、武力や武力による威嚇に訴えないと規定する。今こそ両国は、この精神に立ち返った外交努力に全力を挙げるべきだ。
 日中間は近年、さまざまな問題を抱えている。2012年、中国は日本の尖閣諸島国有化を機に周辺で領海侵入を繰り返し領有権を主張する。22年には米下院議長の訪台に対抗し、大規模軍事演習で日本の排他的経済水域に弾道ミサイル5発を落下させた。今年3月、中国当局が北京でアステラス製薬現地法人幹部をスパイ容疑で逮捕した。8月には東京電力福島第1原発の処理水放出に反発する中国が日本産水産物の輸入を停止、関係は一層冷え込んだ。
 米中対立の激化もある。沖縄にとって最も深刻なのが「台湾有事」の問題だ。日本は米国の軍事的な対中包囲戦略に沿って南西諸島の軍事力を強化、ミサイル網を張り巡らせ、日中の緊張を高める要因となっている。
 これらの課題解決に向け日中は、近隣の国と仲良く付き合うという平和友好条約の「善隣友好の精神」で向き合うべきだ。国家安全保障の基本中の基本である。両国は果たして基本ができているか。むしろ軍事力で相手をけん制し合う関係になっていないか、何度も確認されるべきである。国内総生産(GDP)が日本の4倍超に達している中国が貿易立国日本の最大の貿易相手国であることも考慮しなければならない。
 一方、台湾有事になれば沖縄も戦場になる恐れが強い。日本が進めている南西諸島の軍事力強化や敵基地攻撃能力の保有、台湾有事を想定した日米軍事演習の激化は、中国にとっては「武力による威嚇」に映る。日中平和友好条約の精神に反する。
 中国も軍事力を拡大させている。力を背景にした外交を展開するのなら「覇権主義の放棄」をうたう条約に基づき自制を求めねばならない。日中は条約の精神に立ち返り、対話で対立の火種を除去し、安定的な関係を築くべきだ。
 まずは日中首脳会談を早期に実現してほしい。日本側は来月に米国で開かれるAPEC首脳会議に合わせた会談を模索中だ。偶発的な軍事衝突を紛争や戦争に発展させないための外務・防衛当局間のホットライン構築も急務だ。
 日中両国は台湾有事を起こさないよう注力すべきである。それが沖縄を二度と戦場にしないことにもつながる。