<社説>嘉手納への無人機配備 米軍優先は認められない


社会
<社説>嘉手納への無人機配備 米軍優先は認められない
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍嘉手納基地への無人偵察機MQ9の配備計画について、嘉手納町の當山宏町長が「受け入れる状況にはない」との考えを明らかにした。町議会も計画に抗議する決議と意見書を可決した。

 安全性に疑いがあり、攻撃機能など運用面についても不明点が多い。町長、議会の対応は当然のことだ。
 MQ9にはミサイル搭載機能がある。米空軍のホームページによると、対戦車・対人攻撃のためのレーザー誘導ミサイル「ヘルファイア」を最大8発搭載できる。
 2022年11月から時限的に鹿児島県の海上自衛隊鹿屋航空基地に配備する際、防衛省は地元への説明で「情報収集用の仕様で、武器は搭載できず、攻撃用に使用できない」としていた。嘉手納基地にはこの機体が順次移駐している。
 嘉手納基地の米空軍第18航空団は本紙取材に、主任務は航空偵察だとした上で「弾薬搭載可能」として攻撃機能があることを認めた。
 報道を受け、木原稔防衛相は「武器搭載計画を承知していない」としたが、緊急時の武装の可能性を明確には否定していない。防衛省担当者は1年期限だった鹿屋と異なり、嘉手納配備に期限が設けられていないことなどから、武器搭載仕様への変更を否定することは難しいとの認識だ。
 つまりは、日本政府は嘉手納周辺の住民に説明を尽くしていないのだ。攻撃仕様への変更可能性の説明を避けているとも言えよう。
 仕様の変更は米軍の運用次第であり、関知できないということなのだろう。問題はその米軍の運用に任されるというまさにその点である。
 日米で合意した航空機騒音規制措置(騒音防止協定)で午後10時~午前6時の深夜、早朝の飛行は制限されている。ただ、実態は午後10時を超えての飛行が常態化し、協定は空文化している。嘉手納基地について當山嘉手納町長は「受忍限度を超えるような運用がなされている」とし、無人機の受け入れを困難視した。
 地元自治体などによる騒音に関する要請に対して、日本政府は米軍に協定の順守を求めると答えるのみである。米軍の都合を最優先した運用がまかり通っているのだ。
 だからこそ、日本政府は配備時に確認する必要がある。「武器搭載計画を承知していない」ではなく、主体的に確認し、住民に説明すべきなのだ。
 期限なしの移駐で、地元説明から1週間で1機目が飛来した。鹿屋配備の際の地元説明は、少なくとも本格展開の約10カ月前でもあった。この違いを見逃すわけにはいかない。鹿屋での滑走路逸脱事故の原因も不明なままだ。
 そもそも、攻撃能力を保持できる機種の配備は重大な基地機能強化であり、基地の整理縮小を求める県民の願いに逆行する。日本政府、防衛省は地元を軽視した対応を改めなければならない。