<社説>武器輸出緩和を協議へ 三原則の骨抜き許されぬ


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<社説>武器輸出緩和を協議へ 三原則の骨抜き許されぬ
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 防衛装備品の輸出ルールの見直しを巡って、政府与党のワーキングチーム(WT)が地対空ミサイルなど防御目的の武器の輸出解禁に向けた議論を進めている。戦闘機を撃墜する装備を輸出し、戦闘に用いられれば、憲法が禁じる他国の武力行使との一体化となる可能性が生じる。

 国会議論もなく、両党実務者らの議論も十分とは言えない。協議に上ってくるのも拙速だ。国民への説明もないまま、なぜこれほど急ぐのか。WTで合意し、閣議決定されれば輸出解禁となる可能性があるが、到底認められない。
 自民、公明両党によるWTの協議を経て、政府は従来禁じられていた殺傷能力のある武器の輸出について、一定の条件をクリアすれば可能とし、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機や部品の第三国移転を容認する見解を示している。
 これに加えて、8日に再開されるWTでは防御目的の武器として、地対空ミサイルのほか、護衛艦や哨戒機の輸出も議論される方向だ。より一層の緩和ということだ。
 ことし4月から始まった政府与党による実務者協議の発端になったのは、昨年12月に閣議決定した安全保障関連3文書だ。望ましい安保環境を築く上で装備品輸出を「重要な政策的手段」としてルール見直しの検討を明記した。
 安保3文書は、国是である専守防衛を逸脱する恐れのある敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有も記した。国家方針の大転換となるにもかかわらず、国民に問われることはなかった。
 以前の武器禁輸政策を定めた武器輸出三原則は安倍政権下の2014年に撤廃され、規制を緩めた防衛装備移転三原則に移行した。今回の協議はこの三原則すら事実上骨抜きにするものではないか。
 実務者協議は密室での議論だ。自公両党のWTは7月、次期戦闘機を念頭に共同開発品の第三国移転を可能にすること、救難や輸送など五つの類型の業務を実行するための武器は搭載して輸出できるようにすることなどで一致した。
 ただ、緩和拡大の自民に対して、公明は慎重姿勢であることに加え、9月の内閣改造と自民党役員人事で議論は停滞していた。内閣改造などでWTのメンバーも入れ替わりがあった。それにもかかわらず、8日に議論を再開すれば、12月には意見集約して運用指針の改定を求める方向である。あまりに急ぎすぎる。
 防衛装備の輸出緩和によって、政府は対中国を念頭に「同志国」の安全保障能力を高め、協力を深化させて抑止力を向上させるという。
 緊張緩和には、まずは対話ではないか。その努力の方向性はなかなか見えてこない。抑止力強化に前のめりになる一方で、国民への説明は圧倒的に不足している。憲法の規定に触れる恐れがあるのだ。政府は国会での議論に応じるべきだ。