<社説>旧統一教会会見 被害者の苦悩に向き合え


社会
<社説>旧統一教会会見 被害者の苦悩に向き合え
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 釈然としない。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)が7日に開いた記者会見で「心からのおわび」と述べた。しかし、「組織的に問題を引き起こす体制とは思えない」とも述べ、多くの信者やその家族を長年苦しめてきた高額の献金問題などについて組織的責任を認めなかった。

 「おわび」はしたが「謝罪」はしないという態度は極めて不誠実だ。被害者の苦悩に正面から向き合うべきだ。
 安倍晋三元首相の銃撃事件を機に、高額献金や霊感商法によって資金を集めていた旧統一教会の反社会性が改めて認識されるようになった。
 文化庁は質問権の行使や被害者らへのヒアリングなどの結果、教団が40年余りにわたり高額献金などを通じて、多くの人に財産的損害や精神的な犠牲を強いたと認定した。政府は10月13日、教団に対する解散命令を東京地裁に請求した。教団側は争う構えを見せており、その姿勢は「おわび」の後も変わっていない。つまり、教団は過ちを認めていないのだ。
 司法当局は多くの人にさまざまな犠牲を強いた教団の実態を直視し、粛々と解散命令請求の審理を進めなければならない。同時に、「信教の自由」に配慮しながら被害者救済を急ぐため法整備を議論する必要がある。
 教団日本法人の田中富広会長は会見で「信者の中に行き過ぎた行動があった」と述べ、高額献金や霊感商法に関する問題は認めた。しかし、あくまで信者個人の行き過ぎた活動の結果という認識にとどまったままだ。
 解散命令要件の一つである「組織性」を否定する狙いがあるとみられるが、政府は1994年以降、民事裁判で教団の責任が認められた少なくとも22件の事例を把握している。そのうち2件は、信者だけではなく教団自体の「不法行為」を認定した判決が確定している。
 文化庁はこれまでの調査で、教団の国内組織の本部から各地域の教会に指示が出され、信者獲得や献金集めが実施されたと認定している。教団は被害補償に最大100億円の供託金を国に預ける方針も示したが、問題を解決したいのなら被害者側が求めている集団交渉に応じ、賠償を進めるべきだ。
 そもそも宗教団体から国へ供託金を出す法的根拠はない。批判の矛先そらしと取られても仕方ない。全国統一教会被害対策弁護団が推計する被害額は約1200億円で、100億円では足りない。
 過去にも霊感商法で資金集めをしていた教団の関連会社が摘発されたが、当時も組織的責任を否定していた。供託金表明の裏側に、組織を存続させ、資産保全の法整備を回避しようという教団側の思惑も透けて見える。
 被害者への謝罪と賠償責任は避けては通れない。供託金よりも組織に内在する問題を認めることが先決だ。