<社説>沖縄ヘイトフォーラム 差別解消に沖縄の活路


社会
<社説>沖縄ヘイトフォーラム 差別解消に沖縄の活路
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 軍事基地の重圧に対し声を上げ、何度も民意を示してきた沖縄の人々に対する誹謗(ひぼう)中傷や無関心が壁となり、全国の世論が動かない。このことへの危機感を共有し、いかに沖縄ヘイトを乗り越えるか模索する場となった。

 琉球新報社は創刊130年記念事業・池宮城秀意記念フォーラム「沖縄ヘイトにあらがう―私たちに何ができるか」を開き、沖縄ヘイトの現状や原因、対抗策などについて識者らが提言した。
 基調講演した在日コリアン3世の辛淑玉(しんすご)氏は「ヘイトの標的は朝鮮人の次は沖縄になった。沖縄を日本の植民地として中国への盾となり犠牲にするのは当たり前というヘイトだ。第2の沖縄戦が始まる」と断言した。この言葉は重い。
 優生思想に基づきユダヤ人を虐殺したナチス、朝鮮人や琉球・沖縄人を差別した帝国日本のように戦争と差別はコインの裏表だ。反基地にとどまらず琉球・沖縄に対する差別解消にこそ沖縄の未来を切り開く活路がある。沖縄を二度と戦場にしない誓いは差別との闘いと直結することを明確にしたフォーラムだった。
 ヘイトスピーチが日本で広まった原因について登壇者は、政治家ら公人が次々に差別発言を繰り返し「お墨付き」を与えたことを挙げた。その後、ヘイトは商業化し、差別者にとって「娯楽」になったと指摘した。毎日放送ディレクターの斉加尚代氏は歴史の改ざんがヘイトをまん延させているとし「沖縄の軍事化を進めたい人にとってヘイトは都合がよい」と強調した。
 沖縄に軍事基地が集中し、民間施設や公道を使った軍事演習が激化している。台湾有事を想定し、中国との戦闘に備えた自衛隊配備も進んでいる。その一方でヘイトは沖縄が再び戦場になるリスクの高まりを無視していいかのような空気をつくりだしている。
 沖縄が生き残るためにも、基地の集中という構造的差別や沖縄ヘイトへの抵抗は避けられない。むぬかちゃーの知念ウシ氏は「琉球人は差別が怖いからと逃げるのではなく、闘わなければいけない。世界で闘っている人々から学ぼう」と呼びかけた。「ニライ・カナイぬ会」共同代表の仲村涼子氏は琉球独立を主張した。沖縄へのヘイトは差別を許す本土社会の問題が大きい一方、沖縄側も自己決定権をどう行使していくかが問われている。
 フォーラムの冠にある池宮城秀意は沖縄戦の体験を経て基地問題などで闘った反骨の新聞記者であった。メディアの在り方について登壇者からは権力者の不都合を覆い隠す報道がはびこっていると指摘し、権力者の不正を暴く調査報道を求める意見があった。
 軍事要塞(ようさい)化が進む沖縄では県の地域外交や県民集会など生き残りを懸けた闘いが始まっている。差別やヘイトをなくすことは沖縄の平和を築く上で生命線である。そのことを県民とともに確認したい。