<社説>竹富訪問税 導入に向け十分な理解を


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<社説>竹富訪問税 導入に向け十分な理解を
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 持続可能な観光の在り方について、財源も含めて抜本的に議論する時期に来ている。

 竹富町が検討を進めている訪問税(仮称)について、使い道を定めず徴収する法定外普通税とし、徴収額は有人島への入域客1人当たり2千円とすることで議論が進められている。町は早ければ2024年度中にも導入したい考えだ。
 県内では、「環境協力税」などの名目で伊是名と伊平屋、渡嘉敷、座間味の4村が法定外目的税を導入している。県は観光目的税として「宿泊税」の26年度導入を目指している。また県などは、世界自然遺産に登録された竹富町西表島の1日当たりの入域観光客数上限を1200人とする「西表島観光管理計画」を策定した。
 竹富町に限らず、入域観光客の増加は関連産業をはじめ地域活性化への効果が期待できる半面、自然環境への負荷や渋滞、ごみの増加といった住民生活への影響も問題化している。
 20年の国勢調査によると、竹富町の人口は3942人。これに対し、町への入域観光客数は22年は73万250人。新型コロナウイルス前の19年までは100万人超で推移してきた。
 「訪問税」を、使途を限定した目的税ではなく普通税とするのは、観光客増によって増加する行政サービスの一部を負担してもらう「原因者課税」という考え方だ。竹富町は観光客増で必要となる道路整備やごみ処理費、防災対策費など幅広く活用することが可能となる。
 この考え方は、広島県廿日市市が今年10月から導入している「宮島訪問税」でも取り入れられている。廿日市市のホームページによると「多くの来島者に対応するための施策に必要な経費の一部を、来島者に求めることは合理性がある」としている。
 コロナ禍からの回復につれて海外を含めた入域観光客は回復傾向にある。人口の少ない離島市町村で、自然環境保全と観光振興の両立や、観光客増に伴う行政サービスの増加に対応するためには、「原因者課税」の考え方に一定の説得力がある。各自治体に拡大する可能性もある。
 竹富町は、今後、パブリックコメントや住民説明会などを経て、議会に条例案を提出する考えだ。今後の論点となるのは他の観光目的税などと比べ高い2千円の徴収額と、その課税範囲であろう。徴収方法は有人島への船舶や航空運賃に上乗せする予定としているが、船会社などからは、「上乗せできない」などの声も上がっているという。また、町民と町内事業所に通勤する人らは対象外となるが、出身者らは割安な年払い制度を検討しているものの、課税対象となる見込みだ。
 訪問税の趣旨や目的を生かすためにも、町には住民や事業者の十分な理解を得る努力が求められる。