<社説>財務副大臣更迭 政治不信は危険水域だ


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<社説>財務副大臣更迭 政治不信は危険水域だ
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 常習的な税金滞納を認めながら辞任を拒んでいた神田憲次財務副大臣がようやく辞任した。事実上の更迭だ。9月の内閣改造から2カ月で3人の政務三役辞任である。政治家の劣化は底なしの様相だ。そもそも「身体検査」に耐える政治家が枯渇しているのではないか。内閣支持率は危険水域と言われるが、政治に期待できないという国民の政治不信も危険水域にある。

 神田氏は国会で、2013年から22年にかけて自身が代表取締役の会社が保有する土地・建物の固定資産税を滞納し、差し押さえを4回受けていたと認めた。「深く反省している」と陳謝したが、辞任しない考えを示していた。首相は、本人が認めた以上、直ちに更迭すべきだった。更迭を遅らせた分、政権が受けた傷はより深い。
 山田太郎氏は、20代女性と不倫関係にあり、性行為の対価として現金を支払ったなどと報じられ文部科学政務官を辞任した。現金支払いは否定したが、不適切な関係は認めた。法務副大臣だった柿沢未途氏は、東京都江東区の区長選で、公職選挙法で禁じられているネット広告を候補者に提案するなどした。
 「適材適所」と繰り返していた首相だが、教育、法務、財務に関わる職務に、それぞれ最も不適切な人物を起用していたことになる。3人とも役職の辞任では済まず、国会議員を辞めるべきである。
 改造前の内閣でも閣僚4人の辞任ドミノが起きた。改造内閣でも、身内への不透明なカネの流れで加藤鮎子こども政策担当相が野党の追及を受けている。他の2閣僚にも、禁止されている業者からの寄付などが発覚した。
 就任以来、更迭のたびに首相は「任命責任を重く受け止める」と頭を下げてきた。重く受け止め続けた結果がこうである。国民は政治不信を深めざるを得ない。
 内閣支持率の低迷は政策にも原因がある。
 経済対策に盛り込まれた来年度の減税は、税収が増えた分を国民に「還元」するものだったはずだった。ところが、鈴木俊一財務相は国会で、税増収分は「政策的経費や国債の償還に既に充てられてきた」と説明し、還元の元手は既にないことを明らかにした。そうすると、赤字国債発行で借金を増やして減税するのか。国民はだまされた気分になっている。
 防衛力の抜本的強化やエネルギーの原発回帰などの政策大転換も、マイナカード普及のための健康保険証廃止も、国会での真摯(しんし)な説明なしに、国民を置き去りにして決定してきた。このような乱暴さが、政治不信を強めている。
 首相や閣僚のおわびや決意で変化は期待できない。首相はもう一度組閣をやり直すべきではないか。そして、強引に進めてきた政策をいったん停止して国民的議論にゆだねるべきだ。それができないのなら総辞職しかなかろう。