<社説>陳情の取り扱いに違い 議会改革を進めるべきだ


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<社説>陳情の取り扱いに違い 議会改革を進めるべきだ
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 住民から議会に対して提出される陳情について、議会ごとに取り扱いが異なり、審議されるかどうかに影響していることが琉球新報の調べで分かった。同じ内容でも、議員間で審査した上で採択、不採択を判断する議会があれば、審議しないまま処理を終えている議会もある。

 陳情、請願は憲法に定められた国民の権利である。自らの声を行政運営に反映させるために提出された陳情が審議もされないのであれば、権利が阻害されていることになる。住民の負託に応えるためにも、それぞれの議会で運用について調査し、必要な改革を行う必要がある。
 議会に提出、受理された陳情は通常、会派代表者らでつくる議会運営委員会(議運)に回される。議運から本会議を経て、内容に応じて専門の分野を所管する常任委員会などに付託され審議されることになる。審議を終えると本会議に戻されて採択か不採択を決定して処理を終える。
 琉球新報が県内の市町村議会に陳情の処理状況を聞いたところ、まず議運に諮るかどうかを議長の判断で決定しているところがあった。
 議運に諮られたとしても、常任委での審議に回すかどうかを議運委員の全会一致で決めている議会もあった。つまり、議長が審議の必要がないと判断した場合や議運で全会一致とならない場合は、議員らへの陳情書の配布だけで処理が終わってしまう。
 配布されることで住民の要望を議員が把握し、議員提案の意見書提出につながる可能性はある。意見書が採択されれば、議会の意思を示すことになり、陳情の採択と同じ意味合いにはなる。ただ、陳情者にとっては、審議すらされないことは不本意だろう。
 一方で、委員会付託を原則としている議会もある。つまり、受理された陳情は基本的には全てが審議されることになる。議会基本条例を制定している議会では、条例で陳情の意義などを記したことが影響しているとみられる。
 那覇市議会は「市民による政策提案と位置付け、真摯(しんし)に取り扱うものとする」と明記している。陳情者が意見を述べる機会を設けるよう努めること、審議結果だけでなく、処理の経過についても情報提供をするよう記している。
 全てを審議する議会とそうではない議会では、住民の声にどう向き合うか、姿勢の違いが明白だ。国民の権利の実現が居住市町村によって異なってしまっていると言える。
 他議会の状況に触れる機会がなく、慣例に沿って処理運用を続けていることも背景にあるとみられる。
 審議入りに条件を設けている議会は、先進例などを調査し、見直すべきところは改革してはどうか。その過程も明らかにされれば、住民の信頼も高まるだろう。二元代表の一翼としての役割を全うするためにも不断の改革が必要だ。