<社説>久高前市議会議長逮捕 議会への信頼失墜した


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<社説>久高前市議会議長逮捕 議会への信頼失墜した
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 那覇市の市有地を巡る前那覇市議会議長の疑惑が贈収賄事件に発展した。元議長の逮捕は市議会の信頼を失墜させる深刻な事態だ。

 県警は前那覇市議で市議会議長を務めた久高友弘容疑者を収賄の容疑で逮捕した。那覇市有地となっている土地の所有権に関し、不動産コンサルタント会社代表の男性らから現金を受け取り、議長や市議の立場で便宜を図ったことが疑われている。
 久高容疑者のほか、市有地の所有権を主張する女性の後見人も収賄容疑で逮捕された。さらに2人が贈賄容疑で逮捕されている。今後、捜査の中で事実関係が明らかにされよう。久高容疑者にはほかにも政務活動費192万円を不正受給した疑いが持たれている。
 県市議会議長会会長の経歴もある。高い倫理性が求められる立場にあった久高容疑者の逮捕は、県内に強い政治不信を招くことにもなろう。残念でならない。
 しかも、現金授受があったとされる場所は、こともあろうに那覇市議会の議長室である。市民の付託を受け、市当局と共に市政発展を担うべき市議会の議長室が犯罪の場となったのだ。事実であれば悪質極まりない。
 現金5千万円の受け渡しがあったのは2021年2月とされる。今年3月に疑惑が明るみに出た当初、久高氏は現金授受を否定し続けた。
 ところが10月になり、県警が捜査を本格化させたことで事態が変わった。県警の聴取に対し、関係者が久高容疑者の現金授受を認める証言をしたのだ。結局、久高容疑者も授受を認めるようになった。
 本紙取材に対し、久高容疑者は5千万円のうち4千万円を受領し、残り1千万円を後見人が受領したことを明らかにした。その際、久高容疑者は「結局、収賄罪ということになる。(使途は)忘れたものもある」と述べている。罪の意識がありながら捜査が進むまで事実を隠し、証言を二転三転させた。議会や市民を軽視するものではないか。
 久高容疑者は議会内で不動産コンサル代表らに便宜を図るよう質問を繰り返したとされる。さらに各派代表者会議などで、市有地に関する市の見解を覆すため、百条委員会の設置を提案した。
 所有権を争う那覇市の市有地に関しては久高容疑者以外にも質疑に立った市議がいる。質疑に至った経緯などについて説明してほしい。
 議員は住民全体の利益のために行動すべきであり、特定の人物に利するような議会活動はあってはならない。そこに金銭が介在するならば、なおのこと許されない。
 元議長が起こした今回の事件は、議会のあるべき姿を大きくゆがめてしまった。そのような行為を許す余地が那覇市議会にあったのであれば問題だ。議会全体で検証し、反省とともに市民の前に再発防止を誓わなければならない。