<社説>杉田氏の人権侵犯 差別的言動を放置するな


社会
<社説>杉田氏の人権侵犯 差別的言動を放置するな
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 自民党の杉田水脈衆院議員によるアイヌや在日コリアンの人たちに対する名誉毀損(きそん)発言が止まらない。差別撤廃を訴える運動が利権と結びつき「日本をおとしめている」という主張も広めている。杉田氏の批判は性的少数者や沖縄にも向けられている。発言は人権を侵し、差別を助長させるもので、看過できない。

 理解できないことは、杉田氏の言動を自民党が静観し、重用さえしていることだ。杉田氏に好意的な保守層に配慮しているとも言われる。本当にそのような理由で杉田氏の言動を黙認しているのであれば、公党の見識を疑う。支持率目当てに差別の助長を放置していると言っても過言ではない。
 杉田氏がアイヌや在日コリアンへの侮蔑的な投稿をブログやフェイスブックで掲載したことについて、札幌と大阪の両法務局は人権侵犯と認定した。
 これについて杉田氏は「過去に撤回して謝罪している」などとし、差別や侮蔑をしたという認識は「全くない」とも反応していた。岸田文雄首相らも「謝罪の上、表現を取り消している」などとして静観する。9月の党内人事で、環境部会長代理に起用した。
 ところが杉田氏は、責任を取る形となった昨年の総務政務官辞任について、アイヌ関係団体に直接謝罪することが嫌でやめたと明らかにした。人権侵犯についても、非公表の法務局措置が報道されていることに不快感を示し、さらには法務省の認定自体について「制度としておかしい」と問題視した。
 国会議員としての立場を棚に上げ、救済を申し立てた人たちや認定した法務局に非があるかのような振る舞いだ。
 一連の発言は差別をあおり、憎悪の連鎖を招くものだ。実際に杉田氏の投稿には数万といった賛同の反応がある。賛同する層に呼応するように、在日コリアンへのヘイトスピーチである「在日特権」論について「実際には存在します」などと投稿を続けている。
 「在日特権」は存在するとした発言について、大阪市の人権擁護団体コリアNGOセンターは「在日コリアンに深刻な不安と恐怖をもたらしている」と批判している。
 杉田氏はアイヌ文化振興事業に公金不正流用疑惑があるとして「公金チューチュー」とやゆした。同事業を巡り、政府は「適正に執行され、不正経理はない」と説明し、杉田氏の発言を否定した。それでも偏見に基づく発言を続けるのか。杉田氏は保守系月刊誌のユーチューブでアイヌや在日コリアン、被差別部落、LGBT、そして沖縄などに関する支援運動の動きをチェックしているとも明かしている。
 国会議員が差別をあおり、対象となる人々に恐怖を与えているのだ。自民党はいつまで放置するつもりか。政府もより強い対応を迫るべきだ。