<社説>県民平和大集会 沖縄の戦場化を拒否する


社会
<社説>県民平和大集会 沖縄の戦場化を拒否する
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 平和を求め、再び沖縄を戦場にしてはならないという県民の声を発信する場となった。

 那覇市の奥武山公園で開かれた「11・23県民平和大集会」は、国が進める沖縄の軍事要塞(ようさい)化にあらがい、悲惨な歴史を沖縄で繰り返すまいという固い決意を改めて確認した。沖縄や奄美の島々で政府が進める軍備増強の動きに対し、大規模集会の形で初めて異議を申し立てた。
 超党派を掲げる県民大会や集会では、辺野古新基地反対の意思を明確に表明する一方、自衛隊については慎重な姿勢を保ってきた。しかし、多くの県民、市民は敵基地攻撃能力(反撃能力)を有するミサイル配備の動きや有事を前提とするような軍事訓練をもはや看過できなくなった。それが今回の県民平和集会に結びついたのである。
 会場では一般市民、家族連れの姿もあった。急速に進む軍事拠点化にいま歯止めをかけなければ、再び戦争に巻き込まれるという思いにかられ、多くの人が会場へと向かったのである。沖縄戦を体験した高齢者から10代、20代の若者まで幅広い年齢層が今回の集会で迫り来る戦争への危機感を共有したはずだ。
 県民が抱くこれらの危機感は本来、国民全体で共有されるべきものである。
 78年前に終わった戦争で私たちは、「八紘一宇(はっこういちう)」「一億玉砕」というスローガンに踊らされ多くの人命を失い、アジアの国々に犠牲を強いた。「本土決戦」の時間稼ぎとして戦われた沖縄戦では県民の4人に1人が犠牲になった。この教訓と反省に立ち、政府の暴走に「待った」をかけなければならない。
 政府は2022年12月、国家安全保障戦略など安保関連3文書を策定し、敵基地攻撃能力の保有を決めた。国会審議を経ぬまま、閣議決定だけで、戦後日本の防衛政策の国是であった「専守防衛」がいとも簡単に覆ったのである。「国のかたち」が変わったという現実を県民、国民は厳しく直視する必要がある。
 中国の軍事力拡大は警戒すべきであろう。だからといって「抑止力向上」を名目とした軍備増強だけでは東アジアにさらなる緊張をもたらすだけだ。いま求められるのは対話を通じた緊張緩和だ。「万国津梁」の精神に基づく県の地域平和外交はその実践の一つと言えよう。さまざまなレベルで平和外交を地道に重ねることが緊張緩和をもたらすことになる。
 ロシアとウクライナ、イスラエルとハマスの戦闘を見ても分かるように、戦禍で傷つくのは一般市民、子どもたちである。それは沖縄県民が78年前に体験したことだ。集会参加者、そして県民は二つの戦場の惨禍に沖縄の過去を重ねながら未来の危機を見つめているのだ。
 沖縄を二度と戦場にしてはならない。平和を守る不断の努力を続けることで未来を切り開かなければならない。