<社説>広がる薬物禍 未成年者使用に危機感を


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<社説>広がる薬物禍 未成年者使用に危機感を
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 大麻の類似成分を含む薬物禍が県内で広がっている。未成年者が服用し、救急病院に搬送されるケースも起きている。未成年者の間に広がる薬物被害に危機感をもって対処しなければならない。

 南部医療センター・こども医療センターは8月から今月22日までの間、大麻の類似成分を含む商品を購入し、使用した県内在住者6人、県外からの旅行者4人の計10人を救急対応した。この中に2人の未成年者がいた。
 2人が使用していた商品には規制対象になっていない大麻由来の成分が含まれていたという。1人はカフェの店員に勧められ、もう1人は友人と購入して使用し、意識障害に陥った。
 リラックス効果があるとして大麻の類似成分を含むオイルや食品などの商品が流通している。しかし、一部店舗では製造過程や流通経路など品質を保証する根拠が不明な物も売られている。商品の中には規制薬物が含まれている可能性もあり、医療関係者は「何が入っているか分からないリスクがあることを知ってほしい」と注意喚起する。
 全国で問題となっている「大麻グミ」が県内でも販売され、食べた人が体調不良を訴える問題が起きている。九州厚生局沖縄麻薬取締支所と県は立ち入り調査を複数店舗で実施し、規制薬物を含む商品の販売停止を命じた。
 「大麻グミ」は大麻類似成分HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)を含んでおり、幻覚や記憶障害などを生じさせる可能性がある。
 これまでは規制対象ではなかったが、厚生労働省は22日、医薬品医療機器法に基づく指定薬物にした。12月から規制対象となり、所持や使用、流通が禁じられる。
 しかし、これで安心するわけにはいかない。一つの危険薬物が規制対象になったとしても、その後、成分が似た別の薬物が流通する可能性があるからだ。いたちごっこである。厚労省は成分が似た薬物を包括指定して規制対象とすることも検討している。健康被害を防止するため対応を急ぐべきだ。
 県内では未成年者の大麻禍が現実のものとなっている。今年9月、本島中部の中学生が大麻取締法違反(所持)の容疑で逮捕されている。生徒は「自分で吸うために持っていた」と話したという。
 県警によると、今年1月から8月までの間、大麻取締法違反容疑で警察に摘発されたのは93人で、そのうち10代の摘発者数は18人、20代は42人を数える。大麻使用の低年齢化が進んでいる。
 背景には会員制交流サイト(SNS)の普及がある。危険薬物に関する情報に触れやすくなったのである。SNSによる大麻や危険薬物の流通もある。監視が必要だ。
 罪の意識の希薄化も指摘されている。教育の場で大麻や危険薬物に関する指導を徹底してほしい。