<社説>浦添市討論文提供 議会の役割否定する行為


<社説>浦添市討論文提供 議会の役割否定する行為
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 議会とは何のためにあるのだろうか。

 議案への賛成討論の文面を浦添市当局が作成し、浦添市議会の与党系市議に提供していたことが分かった。2013年3月定例会から、23年9月定例会までの約10年間で、105件確認されたという。文面通りに発言されたものもある。
 採決への意思を議場で表明し自らの立場を市民に明らかにする討論の文面を市当局が作成し、議員が読み上げていた事実は、議会の役割を自ら否定する深刻な事態だ。このような行為はやめるべきだ。
 議会とは、地方公共団体の意思を決定する機能、執行機関を監視する機能を担うものであり、執行機関と相互にけん制しあうことにより、地方自治の適正な運営を期することとされている。
 首長から提出された予算案や条例案などについて、審議の中でさまざまな市民の声を反映させたり意見を出し合ったりして、その可否を決定する。首長を支持する与党系であったとしても、議案に対し市民の立場から質疑し、市民生活の向上の観点で議決への態度を決めるのは当然だ。
 今回明らかになった文面の提供について、市幹部は、個人的な記憶としながら「20年以上前から慣例としてあったと思う」と話している。作成は、各課の部長職や課長職がそれぞれ判断していたといい、別の幹部は「議会でしっかり審議をし、可決してほしいという思いがあり、作成していた」として、あくまで参考として渡していたという。与党市議も「参考資料に過ぎない」と話している。
 しかし22年3月から23年5月までの約1年間でみると、市が作成した10件のうち、8件はほぼ文面通りに発言されていた。議案を提出した市当局が作成した文案を賛成討論としてそのまま読み上げるような議会が、果たして監視機能が働いていると言えるのだろうか。
 地方自治とは、首長と議会の二元代表制であり、その立場は対等であるはずだ。文面作成が慣例として続いていたとするならば、市当局、議員が何の疑問も持たず、双方が議会を単なる行政の追認機関と見ていたと言わざるを得ない。自らの言葉で討論をしないのなら、議員としての資質すら問われかねない。
 近年は、若い与党系議員を中心に慣例見直しの機運も高まっているという。市当局も「12月の議案提案までをめどに、市の方針を調整したい」(幹部)としている。議会と執行部がなれ合いではなく、緊張感を持つことが市民のためになる。このような慣例の見直しに取り組んでほしい。
 議会が首長の追認機関となることは、政策論争が深まらず、議会の存在意義を失わせ、ひいては政治不信につながる。浦添市議会に限らず、県内の各自治体や、全国でも同様の慣例がないか、各議会自らチェックすべきだ。