<社説>ガザ一時戦闘休止 政府は全面停戦を求めよ


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<社説>ガザ一時戦闘休止 政府は全面停戦を求めよ
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 パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスの合意により、4日間の「戦闘休止」が始まった。ハマスが人質を徐々に解放している。人質解放を続けるため期間が延長される可能性がある。一時的休止ではなく「全面停戦」に移行させるよう、日本政府は主体的に積極的な外交に踏み出すべきだ。

 この間、日本政府は、親イスラエル姿勢の米国と中東諸国に配慮する「バランス外交」に苦慮してきた。「人道的休戦」を求める国連総会決議では、反対した米国に配慮して棄権した。議長を上川陽子外相が務め、東京で開かれたG7外相会合では「人道支援を可能にするため戦闘の人道的休止」を支持するという声明をまとめた。米国が「一時的な戦闘中断」を唱え始めたことに素早く対応した形だ。国連安保理でも同趣旨の決議が実現した。
 また、上川外相はイスラエル、パレスチナの西岸地区と他のアラブ諸国を歴訪し、パレスチナへの新たな支援も約束した。日本の態度は、米国に追従しながら米国・イスラエルとパレスチナ・中東のバランスを取ることに終始している。
 今回の戦闘休止は、ガザで犠牲者が出続け壊滅的被害を受けているハマスと、戦闘が長期化し人質の解放が進まないイスラエルの、双方が必要に迫られた結果という。休止が終われば、イスラエルはハマスの徹底掃討と人質全員奪還を目指して戦闘を始める方針だ。ハマスも人質をカードに使いながらゲリラ戦で対抗するとみられる。全面停戦の実現は容易ではない。
 1993年のオスロ合意(パレスチナ暫定自治宣言)は、ガザと西岸を自治区として、2国家共存を目指したものだった。しかし、立役者だったイスラエルのラビン首相が暗殺され、パレスチナもハマスなどによる自爆テロが頻発した。双方が分裂状態になり、テロと攻撃の応酬が続き、和平交渉は進まなかった。国際法違反である西岸地区へのイスラエルの入植地拡大を米国が容認してきたという問題もある。
 憎悪の連鎖の上に現在があり、再び双方が和平交渉の席に着くことは展望しにくい。しかし、人命・人権の尊重のため、国際法順守の観点からも、このまま傍観することは許されない。
 日本政府は、民間人犠牲をいとわず攻撃を続けるイスラエルの行為が国際法違反かどうかには踏み込まない一方で「2国家解決を支持し、当事者間の信頼醸成に取り組む」と繰り返している。米国追従の日和見的・消極的なバランス外交では日本への信頼は揺らぐばかりだ。
 イスラエルともパレスチナやアラブ諸国とも話せると自負するのなら、外交によって世界平和に貢献する時だ。現在の「戦闘休止」を「全面停戦」に拡大することに全力を挙げるべきだ。